蛍光発光を理解するのに、量子力学が必要になるとは思わなかった。やっぱり、光に関するものはたいてい量子力学に関係する、と改めて感じた次第。
固体物質中の、電子の量子準位は、バンド構造を成す。これは大雑把にいって多体系であることに由来する。複数のバンドが縞状に量子準位をつくっているとイメージするといい。蛍光物質は、高エネルギーの光子を吸収して、基底状態にあった電子を高励起準位まで叩き上げることができる。高励起準位は不安定なので、すぐに脱励起する。このとき、光子を放出するのだが、いきなり基底状態までストンと落ちないような準位構造をもっているのが、蛍光体。つまり、途中にある励起状態(バンド)を複数回経由しながら基底状態まで落ちる。
したがって、途中で放出される光子の各エネルギーひとつひとつは、最初に吸収した光子のエネルギーよりも小さくなる。つまり、波長は長くなる。(当然ながら、長い波長をもった放出光子のエネルギー総和は、入射光子のエネルギーに等しい。)このように、放出光子の波長が、入射光子の波長よりも伸びる、というのが蛍光体の特徴だといえる。
狭義の蛍光では、入射光を切ると発光も止まる。燐光というのは、入射光を切ってもしばらく自発的に光るもの。これは、蛍光体に不純物を微量に混ぜてやり、その微量元素の量子構造の選択則から生じる長寿命励起状態を利用したものである。寿命が長いため、しばらくはエネルギーを溜め込むことができ、入射光が切れてもしばらくは光り続けるのである。(しばらく前までは、ラジウムなど放射性同位体も利用していたそうだ....) 広義には、燐光も蛍光といってよいだろう。
さて、LED発光の仕組みにもどる。
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