2011年6月16日木曜日

下水処理による汚泥(およびその焼却物)の放射能

福島原発の事故直後、炉心の圧力上昇を抑えるためにベントを行った。このとき、飛び散ったヨウ素131やセシウム137は気化した状態で空気中の水分にとけ込み、降雨とともに地面にバラまかれた。

東京を含む関東一円は、これにより、広く薄く汚染された。もちろん、ホットスポットは複数あって、その地域の汚染はさらにひどい。広く薄いものも、集積されて濃縮すれば、強い放射能をもつのは当然だ。下水処理施設の汚泥が、今、強い放射能を持ってしまったというのは、ある意味当然のことだろう。多くの地域で放射能物質が洗い流され、ある程度除染された代わりに、下水の中に溜まっていったわけだ。

前橋や東京で測定したところ、焼却した汚泥は、一キロあたり数万ベクレルの放射線を放っているという。はたして、どのくらいの放射性物質がまぎれているんだろうか?

例の如く、半減期の公式に対して、テイラー展開をして一次近似する。すると、半減期τ(秒)の放射性物質の放射レートはN ln2 /τ(ベクレル)で与えられる。Nは紛れ込んでいる放射性物質の「数」(原子の数)。従って、Bベクレルの汚泥の中に含まれる放射性物質の数はN = (B/ln 2)τで与えられる。B=104、τ=30(年)×365×24×60×60 [秒] (>> 1秒)を代入すると、N=1013となった。これをアボガドロ数で割って、セシウム137の分子量137をかけると、質量に換算できる。その結果はなんと汚泥1キロあたり約0.3ナノグラム!

下水処理場を、放射線レベルにして1μSv/h以上に汚染し、一般人が入ることのできない「放射線管理区域」にしてしまったセシウム137の量は、人間からみるとほんの微量だ。しかし、これが、核エネルギーの恐ろしいところ。こんなわずかな量でも、人間の生活を破壊できる。

果たして、人間はこの物質を使いこなすだけの資格/能力/心構えがあるんだろうか?

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