2011年6月11日土曜日

ガイガーカウンタの使い方(環境放射線の場合):被曝量の概算

久しぶりにガイガーカウンタで測定してみることにした。使ったのはSCNINICSのDX-2.

冷やかしではなく、真剣に測定しようと思うと、実はガイガーカウンタの値を解釈するのは案外難しいことがわかった。

ガイガーカウンタというのは、そもそもは放射線の数を測定するものだから、線量(つまりシーベルトで表されるもの)を測定する機械ではない。しかし、安いガイガーカウンター(DX-2を含む)は、カウントではなくシーベルトで表示する。これは、特定の原子核の出す放射線を想定し、一秒あたり(あるいは一分あたり)のカウントレート(=計測割合)を線量に変換しているのである。これを較正(カリブレーション)という。DX−2の場合はセシウム137のガンマ線(エネルギーは0.662MeV)で較正してあるから、原発事故から3ヶ月経った東京で、セシウム137の影響を調査する目的にはそれなりに適している。しかし、この較正には大きな誤差がつきもので、DX-2の場合には少なくとも±20%の誤差があると説明書に書いてある。

東京でガイガーカウンタのスイッチを入れると、ポツッ......ポツッ.....と離散的にカウント音がなる。一回のカウント時の「線量」をみると0.2μSv/h程度の針の振れがあるが、その値は小刻みに変化する。例えば、一分測定したときに20回カウントがあったとしよう。最高値が0.4μSv/hで、最低値が0.1μSv/h、そしてこの20回の平均値0.2μSv/hだったと仮定する。果たして、どの数値を採用すればよいのか?

いちばん頭が悪いやり方は、最高値と最低値を引用するだけの分析だろう。でも、この数字を聞かされた人たちは、おそらく最高値だけを記憶にとどめるはずだ。すると、「この地域は0.4μSv/hあるのか!」などと反応することになる。この数字が意味するのは、この測定地点に一時間立っていると0.4μSv被曝する、ということ。果たしてそうなっているか確認してみよう。

DX−2の測定感度は250CPM。つまり、一分に250カウントするのが精一杯で、それ以上強い放射能が来ると針が振り切れてしまうということ。もっといえば、一カウント検知するための時間が60/250=0.24秒必要だということだ。(放射線測定器の開発者に聞くと、彼らの最新型の測定器でも数十ナノ秒程度の感応時間が必要だという。)実際には光の速さで放射線は飛び去ってしまうので、一カウントで体が被曝する時間はほんのわずかだろう。しかし、その時間を測るのは不可能なので、ザル勘定で「0.24秒」つまりDX−2の感応時間程度と仮定する。

0.24秒は0.0000667時間だから、この時間内に受けたγ線一個による被曝量は、0.4 [μSv/h] × 0.0000667 [h] = 0.0000267 μSvと見積もれる。仮に、20回の測定値がすべて0.4μSv/hだったとしても、0.0000267×20 = 0.000534μSvである。一分間で20回カウントしたという仮定だったから、この値は0.000534μSv/minと解釈できる。これを60倍すると一時間あたりの値になるから、0.03204μSv/h。しかし、この値は針の指した最高値0.4μSv/hを使って計算したもので、実際には20回の平均値は0.2μSv/hだったから、その半分の値0.01602μSv/hとみるべきかもしれない。ましてや、ガンマ線が体を通過する時間は0.24秒なんていう「長時間」な訳ないので、実際の被曝量はもっともっと小さいと思われる。

単発のガンマ線を測定したガイガーカウンターの値「0.4μSv/h」は、実際には0.02μSv/h以下に対応している?なんだそりゃ?ここで必要となるのが、「較正がどう行われたか」だ。

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