リチャード•コーフィールド著(文芸春秋2008年)
昨年購入したまま、時間がなくて本棚に入れっぱなしだった本。忙しいときに限って、こういう本が読みたくなる。まあ、今日は、部屋の掃除をやりはじめなかっただけましかも。
最初の「太陽の章」を読んだ。この本は訳本だが結構おもしろい。英国風のふざけた感じの文体が妙になじむ。(著者はイギリス人。)なかでも、太陽の黒点を巡るガリレオの研究の話が特に興味を引いた。黒点を最初に見つけたのは誰かはっきりしないらしいが、古代中国の王朝ではすでに黒点の存在は知られていたようだ。西洋では、古代ギリシャのアナクサゴラスという自然哲学者の観測記録(紀元前467年ごろ)が残っているとか。
ところが、黒点の正体についての研究は、17世紀まで待たねばならず、またもやガリレオが活躍する。1611年にシャイナーという学者は教会の権威、すなわちアリストテレス風の「天界は完全である」という教条を証明するため、太陽の「あばた」は、実は他の惑星ではないか、という説を提唱した。(つまり、太陽にはシミもあばたもない、ということを言いたかった。)
ガリレオはこれに反論し、黒点は太陽の表面にある、太陽自身の特徴物だと考えた。そして、それを証明すべく観測を始めた。このとき発明されたのが、投影板。この間の観測で使用したのは、ガリレオの弟子がすでに17世紀に発明していたものだったとは。しかし、この発明によって太陽の観測が長時間行われるようになったのだから、大発明だ。この発明以前は、太陽を直視して観測していたので、目を潰してしまう人が多くいたらしい。恐ろしい....
定期的かつ重点的に黒点を観測して、その移動速度を調べたガリレオは、黒点のスピードが太陽の縁で遅くなることに気づく。もし、太陽の周りを回る惑星が、たまたま太陽面を通過する惑星であるならば、このような速度の変化はないはず。(まっすぐ通り過ぎるだけだから。)速度が遅くなるのは、太陽の表面に黒点があるためで、太陽球面の曲がりに沿って視線方向の速度が小さくなり、鉛直方向(つまり地球から遠ざかる方向)の成分が大きくなるからだ。(つまり、球の曲がりに沿って後ろに周りこむ、ということ。)このことから、黒点は太陽の表面にくっついて回っている、ということがはっきりした。
この観測は自分でもやることができる。梅雨が明けて、お日様が戻って来たら真似してやってみようと思う。ちなみに、太陽の自転周期は二週間だそうだから、最大一週間あれば、黒点は端から端まで動いてくれることになろう。
この他、ストーンヘンジの話(さすがにイギリス人だけあって、ここからスタートする)にまつわる、文系の考古学者をおちょくった話も面白い。アンドーバー(ストーンヘンジ直近の町。昔教えた学生の一人はこのひなびた町の出身だった)を走るA303が走り屋のメッカだったとは知らなかった。(訳本にはA303は「ハイウェイ」だと書いてあるが、A303は単なる国道だ。もちろん、日本人が見たら高速に見えるかもしれない。結構広いから。イギリスの高速はMotorwayといって、メシア天体と同じMで識別する。M1というのはロンドンから北に伸びる高速で、ケンブリッジや、ヨーク、シェフィールドに旅行するときにつかう。蟹座とは特に関係ない。ちなみに、M25はロンドンの環状線で、片側4車線あるかなり大きい高速。ヒースローにいったり、ウェンブリーのスーパーに行く時、よく使った道だ。)
また、ストーンヘンジのある、だだっ広い平原はソールズベリー平原というが、本に書いてある通り、ここはチョーク(石灰岩)の白い大地だ。ドーセット方面への化石採集からの帰り道、M27とM3が交わるサウザンプトンが工事中でよく渋滞した。こういうときは、ソールズベリーに迂回して帰るのがいい方法だ。RingwoodからA338でSalisbury、そしてA303に乗り換えて、この真っすぐな道をひたすらぶっ飛ばして帰るのである。実は、この平野自体もいいアンモナイトがたくさん出るので有名。(でも私有地が多いのでなかなか取りにくいのが難。ストーンヘンジの周辺でほじくり返しているのを見られたら、その日は留置所で寝ることになるだろう。)
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