2011年9月10日土曜日

国民生活センターの「比較的安価な放射線測定器の性能」について:強い反論

ハッキリいって、この記者会見も、発表された報告書も、私の周りでは非常に評判が悪い。この会見は「おまえらの祖末なガイガーでなんか正確な値は測れないんだよ。政府の出す数字を信用してりゃいーんだよ!」と横っ面を張られたような感じがする、と憤っていた友人もいた。

特にDose RAE2というCsI型のシンチレーションカウンターが槍玉に上げられていて、その性能の高さを信じていた所有者たちは、ひどく怒っている。

果たして、60万円だしてALOKAのTCS-171を買って来ないと、ちゃんとした測定はできないんだろうか?答えは、あきらかに否である。

しかし、この報告もそれなりにいい点もあるので、その辺りを今回は分析してみよう。また、これをやっている内に、RD1503とJB4020の差がどうして出たのか、はっきりしたのでそれも合わせて検討してみよう。

まず、自明な所からいってみよう。簡易ガイガーカウンタは「正しい絶対値は出せない」という点は、もうほとんどの人が気づいているが、中にはどこぞの週刊誌のように、表示された値を見て驚いてしまう人もいるかもしれない。そういう意味では、国民生活センターの主張はある程度は正しい。

しかし、同じ測定器を使って相対値を見比べるならば、「安価な」ガイガーカウンターでもそれなりに科学的な情報を与えてくれる。さらに、ある地点において、信頼できる測定器と一緒に測れば「較正」もできるので、汚染の有る無し程度なら、かなりの精度で測定することが可能だ。実際、私もそういうふうにして測定を進めて来た。その結果、群馬大の早川さんの汚染地図や、地方自治体が測定して得られた結果と、ほぼ一致する結果を得ているし、それ以上の発見も成し遂げることができた。「安価な」JB4020でも、かなりの仕事ができると、今は自信を持って主張できる。

実は、この報告書でJB4020も槍玉に上げられている。そこで、ここからは各論に入って、報告書の各セクションに述べられている「否定的な結論」について、反論を展開してみたい。

まず、図4のケース。これは、自然放射線を測定した結果。ALOKAは素晴らしい値が出ているが、他の安価な測定器は惨めな結果だ、と述べている。これは、実は「絶対値を出せない」という上記の事実の言い換えであって、特に今更騒ぐような内容ではない。これは零点の修正、つまり較正をすれば除くことのできる誤差だから、まったく問題とはならない。ALOKAだって、ちゃんと較正してないと、「安価なガイガーカウンター」と同じように「惨めな結果」になる。鉛で遮蔽した場合も同じこと。つまり、この実験で言えるのは、「私の高いALOKAはちゃんと較正してありますが、安価なあなたのガイガーは構成してないですね」程度の主張にすぎない。実は、KEKの野尻先生たちの調査によると、RD1503は零点補正が0.04μSv/hあることが知られている。後で述べるように、RD1503もJB4020も同じ程度の零点補正を必要とするので、0.04を引いてやって補正を掛ければ、結構高い精度が出るのである。報告書の図4を見ると、JB4020は、自然放射線量が0.1程度、鉛で遮蔽された場合が0.08程度なので、補正すると、それぞれ0.06と0.04になる。ALOKAの値は、0.06と0.01だから、まずまずの一致を見せている。

また、このセクションだけでなく、ほとんどのセクションで、安価なガイガーは、測定値に「ばらつき」が大きく信頼度が低い、と主張しているが、これはガイガーの使い方をあまり研究して来なかった人、あるいは素人の人と同じレベル、のコメントに見える。これに関しては、後で丁寧に議論したい。

次に、低レベルの自然放射線が正しく測れないのだから、さらに低レベルの食品の汚染に関しては、これらのガイガーカウンターでは測定できない、という箇所が報告書にある。これに関しては二点ほど言いたいことがある。まず、その一は、「そんなことは百も承知。だから、政府は食品の検査をちゃんとやって!」という点。こんな報告書を書く暇があったら、食品の詳細な検査をもっともっとやってもらいたい。「お前らしか測れないんだったら、ちゃんと仕事しろよ!」という怒りの声もあちこちで上がっているようだ。同感。

第二の点は、安価なガイガーで測定できない、と彼らが主張しているのは、食物の放射能汚染は軽微(200-500Bq/kg)と仮定しているからだ。しかし、この仮定は間違っている。稲わらの汚染は75000Bq/kgだったし、その藁を食べた牛の肉は4350Bq/kgだったという。これは500Bqの150倍および9倍だから、線量に換算すると約1.05μSv/hおよび0.06μSv/hとなる。前者ほどの高い線量ならどんな「安価」なガイガーでも「危ないことは」検知できるし、後者だって較正すれば測定可能域だ。政府は、福島の事故を過小評価しようとやっきになっていることは、既に周知の事実だが、ここでもその体質が染み付いているのがわかる。

ちょっと長くなったので、ここでいったん切って、続きは別のセクションに書くことにする。

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