弘前の町は、道が少しずつずれていく。平行に走る道がほとんどなく、直行する交差点も少ない。つまり、一度道を間違えると、発散するニュートン法のように、どんどん目的地から離れていってしまうという、迷路のような町だ。これはおそらく、弘前城下としての機能なんだと思う。敵はなかなかお城に辿り着けない。
苦労して、ようやく外堀通りに辿り着き、正門より城内へ入る。大きい。この城の敷地は広大で、城壁の中には無数の桜の木に、大きな植物園がひとつ、そしていくつかの博物館が置かれている。天守閣までの道は広くて真っすぐで、町のそれとはまったく異なる堂々とした大通りとなっている。この道の向こうに、内堀がある。蓮の花は散っていたが、緑の葉が青々と茂っていた。蒸し暑いし、まだここは夏だ。
内堀に架かる赤い橋を渡って、天守閣へ入る。本当の天守閣は、江戸時代に落雷で焼失したいう。そのかわりに、隅櫓を天守に改造して現在にいたると説明があった。地元の人も「桜が無ければ、まぬけな感じがする」と評するこの改造天守は、確かに迫力に欠けて、優しい感じがした。戦乱を潜り抜けた城ではないが、江戸時代からの姿を止めている。太平洋戦争で焼けたりもせず、明治政府に接収されたりもせず、うまい具合に生き残ったらしい。
赤い橋より天守閣を望む。 |
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