2011年3月30日水曜日

原子炉中のプルトニウムとその同位体の割合

Wikipediaの文献からたどって見つけた文書に、欲しい情報が書いてあった。筆者は京大原子炉の先生。2006年に発表された文書で、その内容の信頼度は高いと思われる。

前にも書いたが、使用済み燃料中に副産物として生成されるプルトニウムの比率は(重さにして)約1%程度。さらに、その1%のプルトニウムに置ける同位体の比率は、軽水炉(福島原発のタイプ)の場合次のようになるという。

主成分はやはりプルトニウム239(Pu-239)で約60%。今回注目されているプルトニウム238(Pu-238)は約2%。そして、その他の同位体(多分そのほとんどがプルトニウム240)が約38%、となっているそうだ。(別の資料によると、Pu-238=2%, Pu-239=56.4%, Pu-240=23.9%, Pu-241=11.3%, Pu-242=6.4%という比率だそうだ。)

Pu-239は、U-238への中性子捕獲(これを専門的にはnγ反応という)および付随する2回のβ崩壊によって生成される。

238U(n,γ)239 U→(β)→239Np→(β)→239Pu.

またPu-240は、Pu-239の中性子捕獲により生じる。

239Pu(n,γ)240Pu

しかし、Pu-238の生成機構についての資料がみつからない。
一つの可能性は、U-238に重水素を捕獲させPu-238を生成する反応。しかし、軽水炉には重水はあまりないはず。重水素の天然存在比率は0.015%だから、原子炉中のプルトニウム−238の比率2%には到底及ばない。報道では、Pu-238の存在こそが「原子炉から燃料がもれている証拠だ」と言い切っていたから、なにか原子炉内の反応に特有なメカニズムがあるはずだ。

なお、この文書の最後に、青森県六ヶ所村における被爆事故のことが書いてある。六ヶ所村には、全国の原発から集められた「使用済み核燃料」の貯蔵施設、およびそこからプルトニウムを再抽出する「再処理施設」がある。再処理したものはMOXなどに生まれかわる。

15年程前、六ヶ所村に一度いったことがある。夏の盛りに行ったというのに、この最果ての北の大地には人の気配も、自然の安らぎもほとんどなかった(三陸海岸の息を飲むような美しさに比べると、ということ)。ただ、よく整備された、真っすぐで太く大きな新しい無機質な道路を、何台も何台も大型のダンプカーが、粉塵を巻き上げながら走っている風景だった。その後、(鬼太郎が住むという)恐山にいったが、六ヶ所村のダンプカーの群れの方が怖かった。

プルトニウムの抽出は、その毒性を考えると、最高度レベルの安全性と慎重さをもって行うべき作業だ。しかし、この文書によると、そういう仕事を請け負っているのは、「下請け企業」の社員、しかも高校を出たばかりの19歳の少年などがやっていたのだという。核物理の知識どころか、科学全般の素養も十分でない未成年の若者に、プルトニウムを扱わせるとは、日本の原子力産業はどうかしている!

きっと、今回の原発事故だって、前線で闘っているのは東電の社員よりも、下請けの人たちの方が多いんじゃないだろうか?そうだとすると、数世紀前にアメリカやヨーロッパで行われていた奴隷制の、形を変えた復活(金銭で支配するやり方)じゃないかと思える程のひどい話だ。

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