使用済み核燃料の「燃えかす」度合に関しての資料を見つけた。併記してある文献から取って来た値だと思うので、まあ信頼できるものだと思う。
それによると、使用済み核燃料の中には、ウラン235が1%ほど「燃え」残っているそうである。また、いままで考慮してこなかった、プルトニウム239も1%残っているそうだ。
前に、福島第一原発の2号機に入っている核燃料の総量を調べ、それはおよそ60トンだった。とすると、燃えかすのウラン235とプルトニウム239は、それぞれ600キロ(!)ということになる。これは、おおよそ1027個の原子核に相当する。ウラン235の半減期は7億年で、これを崩壊寿命だと近似すると、1秒間に数百億回のα崩壊を起こすことになる。使用済み燃料を水(冷却剤)に浸さず放っておけば、この放射線(α線やγ線)のエネルギー(崩壊熱)によって燃料棒が高温になるのは必然。その状態を続けるならば、いずれは容器の融点を超えて、燃料自体がドロドロに溶けてしまうだろう。(ウランの融点は1132度C)
前回の計算では、原子炉中の(未使用)燃料棒からの中性子線量を見積もったが、上のデータを使えば、プールにある使用済み燃料から(自発核分裂によって)飛び出てくる中性子の数を見積もれる。燃えかすは1%ということだから、大雑把に見積もると、前回の計算の1/100、つまり一日平均1万個、つまり1.2ベクレル(ただし、原子炉から取り出して二週間後の時点での値。この値は時間が経つ程減少する。)ということになる。またプルトニウム239もだいたい似たような性質をもつようなので、同じく1.2Bqとなるだろう。しめて2.4ベクレル。プール中の水が蒸発して空になってしまうと、結構な数の中性子線が飛び出てくる。(追記:とはいえ、原子分子の世界のことだから数字が大きくみえるだけだ。ベクレルで測れば、東京の汚染水の1/100にすぎない。)もちろん、使用済み燃料が、事故前すでに長いこと冷却されていたならば、プールからでてくる中性子の量は減っているはずで、東電の測定が示すように「微量」ということになるはずだ。
それにしても、原子炉は何重にもバリアーを巡らせているのに、使用済み燃料プールはコンクリートの建物で覆うだけとは、安全設計に問題があったといわざるを得ないのではないだろうか?
今まで見てきたように、使用済み核燃料が単なる「使用済み」なのかというと、実はそうではないことは明らかだ。これに加えて、もう一つ知っておくべきことがある。それは、使用済み燃料の中に含まれるプルトニウムの存在だ。プルトニウム239はウランの連鎖反応の副産物として生じ、使用済み燃料に1%程度含まれる。このプルトニウム239は、それ自体が連鎖反応を起こすことができる「核燃料」だ。(長崎の原爆はプルトニウム239が主な原料。)また、3号機の中に入っているMOXというのは、使用済み燃料から抽出したプルトニウム239を濃縮してウランに混ぜ込んだもの。つまり、「使用済み燃料」というのは、こういった側面からも「通常の意味での使用済み」とは到底異なる代物で、「使用済み」だから安全などと思っていると、とんだしっぺ返しを食らう可能性のあるものだといえる。(恥ずかしながら、これらのことは、今回の事故で初めて知ったことだ。しかし、もし東電の技術者も私と同じレベルだったとすると、彼らに原発を建設/運営を任せるのはもう無理なのではないか?と思う。仮に知っていたのなら、なぜそれを基に安全設計できなかったか?ということになる。必然、醜い話となってしまうので、これ以上立ち入るのはやめる。)
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