地震のお見舞いメールが世界各地から届いている。英国、ドイツ、スペイン、イタリアなど、かつての同僚や教え子、そして友人たちからのものだ。ドイツ人の教え子からのメールは数年ぶりで、とても懐かしく、うれしく思った。しばらく彼からの連絡が途絶えていたのは、身の回りにいろいろなことが起きて、それと闘っていたからとのことであった。ハッキリとは書いてはなかったが、韓国系ドイツ人ということもあり、就職する際など差別の問題などがあったと思われる。
技術的なことを書いて来たメールもあった。英国に住むイタリア人の友人からのものだ。彼は、英国の大学の原子核物理学科でPhD(博士号)を取得し、その後ケンブリッジにある欧州核融合研究所JETに就職した。バブルの頃ロンドンのシティで金融の仕事(ヘッジファンドのマネージャーなど)に転職したが、現在は無職充電中。とはいえ、南フランスに設立されたばかりの国際核融合研究所ITERから仕事のオファーが来ているとか。LSE(ロンドンスクールオブエコノミクス)でMBAをとって経営の道を極めるか、それともITERで物理学者に戻るか、検討中だそうだ。
彼のメールには福島第一原発の設計に関する問題が書いてあった。実は、福島第一原発の原子炉のうち、一号機と二号機はアメリカのゼネラルエレクトリック社(GE)の製品だ。このことは、今回の事故が起きるまでは日本のwikipediaに書いてあったが、現在はなぜか削除されている。英語版のwikipediaにはまだ載っているので、それを引用すると1、2そして6号機がGE,3と5号機が東芝、そして4号機が日立となっている。今回炉心を包む格納庫が2号機で損傷した。(日本のwikipediaによると「3号機も損傷の疑いあり」と書いてあるが、政府のメモにはそれは書いてないので、これはまだ信用度の低い未確認情報と思った方がよいだろう。)使用済み燃料を安全基準の低い建屋に置きっぱなしにしてしまったという、馬鹿な凡ミスに比べると、格納庫の損傷はシステムとしてはより深刻な事故だ。(もちろん、溶け出した燃料棒から高濃度の放射性物質が漏れだすという意味では、両者とも深刻度は等しいが。)
New York Timesが報じているように、GEの開発したmark 1型と呼ばれるこの原子炉は、その格納容器の強度に欠点があることが、ずいぶん昔から専門家によって指摘されていた。更に、この友人によると、安全性より経済性を優先した設計を嫌って、プロジェクトに関わっていた技術者の多くが会社をやめたそうである。実際、今回「唯一」格納容器が壊れたのはGEのmark 1、つまり2号機だった。
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