2011年3月28日月曜日

ウラン235の連鎖反応の物理(4:連鎖反応による発電のしくみ)

連鎖反応をそのままにしておくと原爆になってしまう。(もちろん、連鎖反応を「安全に」始めるところまでが結構難しい問題で、マンハッタン計画の物理学者、数学者たちはそこで最初悩んだわけだが。特に、核物質の幾何学的な配置が重要らしい。)発電の観点からすると、できれば、ちびちびとエネルギーを取り出したい。

しかし、外部からエネルギーを引き込んで、わざわざ連鎖反応を押さえ込むようなことはしたくない。エネルギーを作るのにエネルギーを使ってしまったんでは、本末転倒だからだ。(実は、核融合発電が現在この段階にある。発電するために、大量の電気が必要で、トータルではマイナスになってしまっている。これをプラスに変えようとする計画がITERだ。)

連鎖反応が爆発的に進むのは、分裂後の中性子線が2本以上飛ぶことが原因だった。そこで、発電するときは、中性子線を一本に抑えることで、一個一個順番に核分裂するようにしている。そこで減速材が登場する。

中性子は、やたらな「スピード」でウラン235にぶつかろうとしても、「ぶつかることができない」(散乱しない)。つまり1MeV以下の遅い中性子でないと核分裂はおこせない。実は、核分裂から出てくる2〜3個の中性子線のエネルギー平均値は1MeV程度と若干高めで、どちらかというと「速い中性子」に属する。速い中性子は、ウラン235にぶつかり難い。つまり、なにもしないと、ウラン235の連鎖反応を引き起こす中性子線を一本に抑えるどころか、0本となって、連鎖反応が起きなくなってしまう。

減速材とは、結局中性子のスピード(運動エネルギー)を1MeV以下に落とすための物質で、福島原発では軽水(普通の水)が使われている。正確には、水分子中の水素原子核(つまり陽子)を中性子に何度も何度も当てることで(弾性散乱)、中性子を熱的平衡状態に落とし、そのエネルギーを下げる。(いわば、パチンコ台の球のように、釘/ピンに当たる度に、下に落ちるスピードが落ちるようなものである。)中性子のスピードを遅くしたり、核燃料をうまく配置したり、中性子を吸収する制御棒の出し入れなど、いろいろな要素を組み合わせることで、遅い中性子の有効衝突数を1個に制御することができる。(そのやり方は結構複雑に見えるので、ここで深入りするのはやめる。)こうして、原発から「ちびちびと」エネルギーを取り出すことができるようになる。

こうして苦労して取り出した核エネルギーは、結局、お湯を沸かすのに使われる。蒸気となった水は配管を勢い良く伝わり、風車(タービン)を回す。タービンには磁石が取り付けられていて、磁石が回転するたびに、ファラデーの電磁誘導の法則によって、電線中に電気が流れるのである。このお湯/蒸気は種々の放射線によって沸かされるため、放射能を帯びる。したがって、原子炉とタービンを行き来する湯/蒸気は、絶対に外界に出て来てはならない。

今現在、福島原発の1、2、3号機のタービン下に溜まっている水は、この放射能を帯びた水であることはおそらく間違いない。問題はメルトダウンで溶けた核燃料(つまりウラン)およびその分裂生成物(セシウムやヨウ素)も一緒に溶け出ている可能性があることだ。だとすると、それは放射線に曝露した程度の水では収まらず、放射能物質を溶かし込んだものになっていて、非常に強い放射能を持ってしまう。(どうも、このシナリオが一番ありそうな感じがする.....)

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