さて、実際に測定した結果を解析してみよう。場所は東京城西地区の木造建物内。測定時間はトータルで90秒(天体撮影なら「30秒と60秒の2枚のコンポジット」ということになろうか...)全カウント数は19だった。それぞれのカウント時に読み取った針の値はどれも0.2μSv/h(メモリは0の次が1μSv/hで、その中間値は目分量で読んだ)。
まず、CPMを計算する。CPMは一分間あたりのカウントレートということだから、19*(60/90)=12.7となる。ガイガーのそもそもの役割はここまで。まあ、環境放射線としては普通のレベルだろう。
次に問題の線量の読み取りの分析にとりかかる。一回一回のカウントの値は、当然0.2μSv/hということになるが、実際には90秒で0.2×(0.24/3600)×19=0.00025μSvの線量しか積分値としては来てないので、その時間平均は0.001/90=0.00000281μSv/秒、つまり0.01μSv/時と計算される。つまり、一時間この部屋にいたら0.01μSv被曝するのである。一年では87.6μSv、つまり約0.1mSv/年ということになる。(これは国による最初の制限値「1mSv/年+環境放射線」の10%にも到達しないから、まー安全でしょう。)
上の手計算を公式の形にまとめると、次のようになる。
<D> (μSv/h) = (ΣiSiNi)/Ns × (60/T)
もちろん、この公式の適用範囲は、ガイガーカウンタによる測定で、環境放射線のように離散的にカウントが入る場合のみ。計算される量は、測定時間内の時間平均<D>で、単位はガイガーカウンターの目盛りの単位と同じもの(DX-2ではμSv/h)。
公式の中に出てくる変数について説明する。まず、S
iはガイガーカウンターの針の値。N
iはその値が出た回数となる。たとえば、5回カウントがあって、その際0.2,0.2,0.4,0.6,0.2(μSv/h)とそれぞれ針が振れたとしよう。i=1,2,3を0.2, 0.4, 0.6に対応させて、S
1=0.2, N
1=3; S
2=0.4, N
2=1; S
3=0.6, N
3=1と割り振られる。
また、Nsはガイガーカウンターの感度。DX-2の場合は一分に250カウントまで識別できるから、Ns=250とする。
最後にTは測定時間(の合計)で、単位は秒とする。60という数字があるのは、感度が一分あたりのカウント数で与えられている場合を今は想定しているからであり、Tが秒の単位なので、「60秒」を使用している。この値は観測条件によって適宜変更すればよい。
この測定では、標準偏差がとても大きなる(ほとんどの場合0μSv/hが「観測」される、と見なされるので)傾向がある。つまり、ポツポツ離散的にしかガイガーカウンタが鳴らないときは、だいたい「安全」と考えてよいと思われる。
危ないのは、カウントに切れ目がなく、針が上がったきり0に落ちないような場合だ。そのときは、目視測定を基に、上の公式で計算することは困難となる。パソコンなどを利用して、自動計測しなくてはならいないだろう。しかし、知り合いの実験家によると、最近のデジタル式ガイガーカウンタにはそういう機能が入っているものもあるそうだ。(中華製やらウクライナ製のものはちょっと怪しいとか、そういう噂も言及していたが。)説明書をよく読んで、どんな仕組みが組み込まれているかをよく理解するのが大切と言えよう。
そもそも、一般人が、一般の環境で放射線測定やるなんて状況がおかしい。ガイガーカウンタは専門家や科学者など訓練された者が使うだけの道具だった。だから、一般の人が測定を始めて、いろいろ問題が起きてくるのは当然のことだろう。
このことが意味するのは、破局的な状況に我々日本人はいる、ということだろう。「まあまあ、大丈夫ですよ」と無責任には言えない世界になってしまった。だれもが科学の知識を身につけ、闘っていかなければならない。ナウシカ風に言うと「火の七日間」の後の世界に我々は生きていて、「腐海の森」は福島を中心に広がりつつある。そして日本各地に点在する「巨神兵」をみな化石にしない限り、腐海はまだまだ広がる可能性がある。そして、「腐海」で汚染された生物が溢れ出た時、大海嘯がやってくるかも。(王蟲みたいな昆虫の突然変異は起きませんように。)