2011年4月15日金曜日

ベクレルからシーベルトへの変換:混乱している現状

毎日新聞の記事Web版:四月十二日22:41の記事)に、ベクレルとシーベルトの解説があった。ちょっと引用してみよう。
【ことば】テラベクレル : ベクレルは放射線を出す能力(放射能)の強さを表す単位。テラは「1兆倍」を表す。1テラベクレルとは、1秒間に1兆回の原子核崩壊が起きる際の放射能の強さを示す。標準的なラドン温泉1トンが持つ放射能は約1000万ベクレル。一方、シーベルトは放射線の人体への影響を示すもので、1ベクレルの放射性ヨウ素を経口摂取した場合の人体への影響は、0.022マイクロシーベルトとなる
 最後の部分がひっかかった。実はここがいつも引っかかる。以前ベクレルとシーベルトについて考察したが、その後あちこちのサイトで見ると、その説明や計算、分析にかなりばらつきがあることに気がついた。一生懸命調べてみたのだが、なかなか答えが見つからず困っていた。しかし、今日ようやく解決の糸口が見えてきた。

まず、上記の毎日新聞の記事は、いったいぜんたい、どうやってそういう結論に達したのか調べてみた。そのヒントは、文部科学省の環境放射能データベースにあった。このデータベースのサイトに入り、そのページの下方を見ると、「実効線量係数の例」の表がある。

この表の131I、つまりヨウ素131(蒸気)の欄を見ると、2.0×10-5 (mSv/Bq)とある。ミリシーベルトをマイクロシーベルトに変換すると、この数字は0.02マイクロシーベルト/ベクレルとなって、毎日新聞の記事にほぼ一致する。つまり、ヨウ素131から出てくる1ベクレルの放射能は、0.02マイクロシーベルトの線量に対応する、ということだ。

実は、毎日新聞では「経口摂取したとき」とあるので「ヨウ素131が溶けた水を飲んだ時」という意味になる。「蒸気」の欄には経口摂取のデータはない。文部科学省のデータをさらに見ていくと、ヨウ素131(ヨウ化メチル以外の化合物)という欄があって、そこには経口摂取のデータが書いてあって、毎日新聞の値と一致している。また、これ以外にも、ヨウ化メチルという形態に体する吸入摂取の値が書いてある(経口摂取はない)。

NPO法人の原子力資料情報室(CNIC)によると、経口摂取の場合の実効線量係数は0.022マイクロシーベルト/ベクレル、一方吸入摂取の場合は0.011マイクロシーベルト/ベクレルとある。さらに、面白いことに、文科省の委託事業「公益財団法人原子力安全研究協会」が発行するデータには、ヨウ素131の経口摂取の実効線量係数は0.022マイクロシーベルト/ベクレル(NPO法人と同じ)、そして吸入摂取の場合は0.0074マイクロシーベルト/ベクレル(まったく新しい数字!)となっている。

ここで、すでに混乱が見られる。上のデータをまとめてみよう。

機関(実効線量係数文科省(蒸気)NPO、文科省(非ヨウ化メチル)公益財団法人
経口摂取(μSv/Bq)データ無し0.0220.022
吸入摂取(μSv/Bq)0.020.0110.0074

さらに、文部科学省が発行した公式文書を読むことができる。これは、平成18年12月26日に最終改正版が出ている105ページの長い書類で、放射線に関わる様々な量に関して「文科省による定義」を与えている。(実は似たような文書が旧厚生省からも発表されている。)66ページ目にヨウ素131に関する定義が載っている。文科省のデータベースと同じように、ヨウ素の3つの化学的形態について、異なる実効線量計数が与えられている。まとめると、

文科省文書(平成18年12月)
--------------------------------------------------------------------------------
 形態                      吸入     経口
--------------------------------------------------------------------------------
単体(蒸気): 0.02     -            
ヨウ化メチル: 0.015   -
その他   : 0.011   0.022(NPOの値と同じ。経口は法人と同じ)
--------------------------------------------------------------------------------
単位(マイクロシーベルト)

131I(蒸気:単体)と131I(ヨウ化メチル)の2つの場合は、吸入の場合しかデータがない。その値は、ヨウ素単体よりもヨウ化メチルの方が若干線量が低くでるよう設定されている。ヨウ化メチルというのは、ヨウ素の炭水化合物でCH3Iと表される。最後の形態が、131I(ヨウ化メチル以外の化合物)で、この場合は、NPO法人の値とまったく同じになっている。経口摂取の値だけを見ると、公益財団法人(原子力安全研究協会)のものと一致しているが、吸入摂取の値は全く異なっている。

さて、人々の関心は、水に溶けたヨウ素131であったり、ほうれん草に取り込まれたヨウ素131だ。原子炉から飛んで来たヨウ素131は、果たしてどんな化合物の形態になって我々の環境を汚染しているのだろうか? この続きへ。



2 件のコメント:

美智子 さんのコメント...

ご説明、とても分かりやすくて頭の中がすっきりしました。有益な情報ありがとうございます。retweetボタンはおつけにならないんですか?^^

(すみません。前回のコメントを間違って削除してしまったので、同じコメントを投稿しておきます。とはいえ、削除したコメント自体がたいしたコメントではなかったので再投稿するにあたり、かなり悩みましたけど・・・ 汗)

kuzzila さんのコメント...

実はまだ続きがあるのです。現在分析中なので、もうしばらくお待ちください。