2011年11月30日水曜日

ブルーレイドライブを導入

「超新星爆発のおもしろい番組があったから、録画したのを貸すね」と友人からディスクを借りた。なんかちょっと黒っぽいな、と思いながらDVDドライブに差込むと、認識に失敗する。こりゃ、このドジでノロマなToshibaのDVDレコーダーが馬鹿なせいだ、と決めつける。じゃあってんで、同じくToshibaのDynabookに入れてみたが、やっぱり吐き出してしまう。そこではっと気がついた。「これブルーレイディスクだよ...」と。

友人は、世の中もうブルーレイに移行しきっていると思っているのだろうか?なにも言わずに、BDを貸してくれたのだった。内容を楽しみにしていただけに見れなかったショックが大きく、諦めきれない。実は、DVDがありゃ十分じゃないか、とBDの意義に疑問を感じていたので、買う気がまったく起きなかったのだが、この友人の無言のプレッシャーに負けた。

I-O DATAのBRD-U8DMというのを買った。ネット対応だというので、ゆくゆくは馬鹿でノロマなToshiba Vardiaからのデータをごっそり引き抜いてやりたいものだが、面倒くさいコピーライトプロテクションとかやらで、結局はうまくいかないかもしれない。

とにかく、この型落ちDVDレコーダーには腹がたってしょうがない。まず、動作が遅い!リモコンのボタンを押してもすぐに反応しないし、削除/移動に気が遠くなるような時間がかかる。そしてなにより、CPRM付きのDVDにしかダビングできないので、Diskを持ち歩きしないといけないので不便。(ダビングも等速でデータ書き込みをやっているようなので、気を失いそうになるほどの遅さだ。)いろいろ試したが、これはもう使えない、という結論に達し、もうDVDレコーダーはこりごり、という気分になっている。さらに、日本のテレビ番組のレベルの低下は甚だしく、録画してまで見ようと思わなくなってしまった。

DynabookにBRDをつなぎ、対応するソフトをインストールして、おそるおそるBDを開くと...鑑賞できた。たしかに、画質は素晴らしい。ときどき、映像が飛ぶが問題はない。しかし、BDを見る度に、このドライブを繋ぐのは面倒だ。よっぽどのことがなければ、しばらくはDVDで十分のような気がする。

ところで、VardiaもDynabookも東芝なので、CPRM付きのDVDが再生できるはずなのだが、いままで面倒くさくて試してみようと思わなかった。この機会に、思い切って調べてみることにした。まずは、買ってきたCPRMディスクをVRモードでフォーマットする。そして、入れたい番組を選び(たくさん選んで、ぴったり録画にすると圧縮してくれる)、ディスクに書き出す。最後にファイナライズ処理をする。こうして作ったDVDをWindows Vistaの入ったDynabookで再生すると、東芝の再生ソフトでは何の問題もなく再生できた。いっぽう、WinDVDではアップデートしなくてはならなかった。面倒なので、東芝の再生ソフトでいいや、と思っている。vlcとかでは再生できるのかどうか興味あり。今度試してみよう。

(追記:Fedora12 のdefault setupでは、認識すらできなかった。なにか技があるはずだが、今の所お手上げ。)


2011年11月29日火曜日

レフェリーの仕事

今年はレフェリーの仕事を久しぶりにやった。しかも2つ続けて来た。

英国でのメールアドレスをばっさり切られてしまったので(Computer managerの性格の問題だと思う)forwardしてもらえなかったけれど、そのかわり世界に対して「行方不明」になることができた。忙しいときに限ってやってくるレフェリーの依頼から、しばらく逃げていたので、随分平穏な日々を過ごすことができた。しかし、自分で論文を書き出して、居場所がついに割れてしまったようだ。

それでも、レフェリーレポートを出した後は「物理学会に貢献している」という気分に浸れるし、悪い気持ちはしない。いろいろ勉強にもなる。いい論文はencourageし、悪い仕事はバッサリ切れるような、いいレフェリーになりたいものだ。

2011年11月28日月曜日

吉田所長の入院

ちょっと前(9月中旬)に、フランスの核施設で火災が起きたという報道があった。(朝日新聞の記事はこちら。)死亡者は一人出たものの、報道当初は放射能漏れや作業員の被曝は無い、とされていた。

ところが、9月末にスペインで、「死亡者の死体がひどく放射能を帯びていて、家族も近づけないよう厳重に遮蔽されていた」という記事が発表された。(シカゴ大学のブログ記事はこちら。)この記事によると、フランス政府は事故の詳細やそれに関わるデータを公表してないという。

福島第一原発の所長が、病気のため入院したという報道が流れた。その病名は公表されていないが、放射線障害ではないと主張している。相当量の被曝をしていたらしい、という噂があるが、その量は公開されていない。火のないところに煙はたたないと思う。


2011年11月27日日曜日

テレビ朝日が原発問題を訴えるコマーシャルを拒否した件

これも同じ日の東京新聞の記事より。

原発、いつ、やめるのか、それとも いつ、再開するのか。それを決めるのは、電力会社でも 役所でも 政治家でもなくて、私たち 国民一人一人。
などと大滝秀治が語る短いCMの放映をテレビ朝日は拒否したという。

つまり、国民一人一人が考える問題ではないと、テレビ朝日は思っているんだろう。朝日新聞は戦争に加担した新聞だったということを思いださせる記事だった。

長崎の内部被曝調査を中止した件

今日の東京新聞で読んだ記事。(ネットで探すと同じ系列の新聞に同じ記事があった。)

外国人に、広島や長崎に人が今は住んでいるようだけど大丈夫だったの?、とか、いつ放射能が消えたのか?とか質問されることがある。実際、自分も子供の時そう思った。「意外に早く放射能の影響は消えてなくなるのだろう」と勝手に考えてしまったが、実際にはそうではないことがこの記事で初めてわかった。

長崎に落とされたプルトニウム型原子爆弾のせいで、内部被曝してしまった人々の健康調査が、なぜか1989年に中止されてしまった「事件」についての報道だ。1989年といえば、原爆投下の1945年から数えて44年分のデータに相当する。

調査は長崎の爆心地から東に2〜4キロほど離れた西山地区にて行われていた。この地区は、山によって爆心地から遮られているので、熱線や爆風といった原爆の力学的な破壊の影響はまったく受けていない。しかし、「黒い雨」だけが降ったという。ということは、純粋に放射能物質の拡散による「内部被曝」の影響だけを調査できる場所だったといえる。

この調査によると、1945−47年には全住民の白血球が増加(一時的だったそうだが)。1969年には、周辺の地域で黒い雨など原爆の影響を受けていない地域に比べ、二倍ほどの放射性セシウムが体内から検出される。原爆投下から、なんと24年後のことだ!

1987年には、西山地区の人々が甲状腺癌などの癌にかかる確率が、普通の人たち(たとえば東京の人たち)と比べて4倍以上に達していた。

セシウム137は半減期30年だから、30年経てば安心か、というとそうではないことがこれでハッキリわかる。(同じようにヨウ素131も半減期が8日だから、一週間も経てば安心だ、とは言えないはずだ。半減期というのは、1/2になるまでの時間だということを忘れてはならない。)むしろ、20年後とか30年後あたりから健康被害は始まるのだと思う。そして、50年後あたりで問題が顕在化してくることが、この長崎の調査によって示されているように思う。

日米共同で設置された研究所の分析では、西山地区の住民が44年間に浴びた線量の合計は、100μSvだったと推定している。つまり、44年で0.1ミリシーベルト。研究所は「これは十分低い値だから問題ないレベルだ」として調査をやめてしまうわけだが、逆にこれだけ少なくても遺伝子は破壊され、発ガンリスクが4倍も高くなってしまうというのだから驚きだ!

実は研究所に務めていた研究者自身は、内部被曝の調査続行を要望していたが、政府の命令で強引に打ち切られたようだ。明らかに、日米両政府にとって、得られた科学データが都合が悪くなったからであろう

このデータは、はっきり言って、20年後、40年後の福島の姿を予言してくれるだけに、1989年で調査が終わってしまったのは残念至極だし、政府にとっては思うつぼだろう。でも、今から再開しても遅くはあるまい。

2011年11月23日水曜日

軽井沢のセシウム汚染:追分の上へ

長野県の放射能汚染マップが文科省より公開されたが、その測定法から鑑みて(つまり、航空機を飛ばしならが空中から測るわけで)、詳細な分布図はやはり足で稼いでつくるべき。朗報なのは、JB4020やRD1503も、RAMI(逐次積算平均法)を用いれば、文科省の測定と首尾一貫した結果が出せることがわかったこと。つまり、「安価な」ガイガーカウンタでも、よい精度で測れるということだ。

今回の測定は、追分から石尊山に向けて、標高を上げていったらどうなるか、という疑問を解決するために行った。軽井沢の汚染が長野県で最悪なことはもう確実だが、その周辺の御代田、小諸、上田、佐久の中心部は、驚く程汚染が軽微だ(注意:佐久の群馬県境周辺は除く)。どこに汚染の境界があるのか知りたいと前から思って来た。それは、御代田のどこかにあるはずだが、それが石尊山から追分にかけてなのか、それとも小浅間、峰の茶屋から追分にかけてなのか、今ひとつハッキリしない。文科省の汚染地図では、小浅間の方に境界があるように見える。「境界」は小浅間から離山に向けて下っていて、さらに追分まで18号沿いに広がっているに見える。一方、追分の上、つまり浅間に向けての法学は汚染が弱い様に見えるが、今回はその確認が目的。これが正しければ、石尊山は汚染されていないだろう。

石尊山は低山とはいえ浅間山の中腹にある山だ。標高1700m弱で、往復4時間の結構な登山となる。しかし、朝寝坊してしまったため、追分の上にある登山道に辿り着いたのはすでに昼過ぎ。頂上まで行って帰ってくるころには真っ暗になってしまう...ということで、今回は残念ながら途中まで。(一回の測定に10分かかるので、6回やったら測定だけで一時間過ぎてしまう...)途中走ったりもしたが、血の池どころか、血の滝にも辿り着けなかった。天気も怪しくなってきたので、6キロの行程の半分を行った所で引き返した。1200m地点に相当する場所だが、実はここまでは勾配が緩やかなのだ。本当の登山はここから、と思ったら気後れしてしまったのは事実。とはいえ、麓の状態を細かく調べることができたので、次回の測定では気分良く頂上まで一気に登れるはずだ。

今回は五カ所で測ったが、窪地や尾根の比較をしたり、同じ場所での測定があるので、地図で新たに図示したのは3カ所。登山道入り口で0.15μSv/h(以下生データ)、最初の林道との交差点では本日の最高値0.17μSv/hを記録(約1100m地点)。ここは松林を伐採した場所だった。驚いたことに、二本目の林道と交差する1200m地点(本日の最高地点)で測定すると0.10μSv/hに低下した。窪地と尾根の両方で測定したがほぼ同じだった。(窪地は0.11、尾根は0.10)。

今回の結果は、一応は文科省の汚染地図に似ていると思う。しかし、1100m地点で汚染がもっともひどかったことから、汚染分布はもう少し複雑なのかもしれない。しかし、追分の0.27μSv/hのようなひどい汚染はなかったので、今日歩いた登山道は「境界の外」にある可能性が高い。あるいは、「刷毛で描いた太めの境界上」だったのかもしれない。

この調子だと石尊山の頂上は汚染が無い/軽微だと思われる。が、とにかく次回は登りきって測定したいものだ(が、冬近し...雪の中の測定は避けたい)。

2011年11月22日火曜日

蟹星雲(M1)の観測

牡牛座のV字が登って来た。昴は先日撮ったので、今度は角の先にある蟹星雲(M1)を狙ってみた。昨年の冬は望遠鏡と双眼鏡で観測してみたのだが、見つからなかった。おうし座のξ星のちょっと上にあるというので、そこを狙ってシャッターを切ると、うまい具合に写っていた!
蟹星雲(M1)

これは藤原定家の名月記にも記録があるという、超新星爆発の残骸。当時は昼までも見えたほど明るく輝いたという。中心部の中性子星はパルサーになっていて、最初に発見されたときは宇宙人からのメッセージではないか?と疑われたこともあった。さすがに7200光年の遠方にあるだけあって、この程度のレンズでは小さく写るだけだ。見栄えはしないが、メシエカタログの筆頭でもあるし、記念としてここに観測記録を残すとす。(よくみれば、ガスが広がっていく様子が見えなくはないし。ただ、中心部にあるはずの中性子星は写ってない。)

11月の天の川:夏の大三角の周り

なかなか綺麗に晴れ上がらない中、慌てて撮った夏の大三角とその周りの天の川。肉眼の方がいい感じに見えるような。それでも、一応は北アメリカ星雲などが写っていて、次の観測の役には立ちそう。こぎつね座の亜鈴星雲(M27)はどこかわからず。

この写真撮影の直後に、雲が湧いて来て、曇り空になってしまった....

北の天の川

双子座のM35散開星団

そういえば、最後の撮影で双子座のM35散開星団にチャレンジしたのだった。場所がよくわからなかったのだが、ファインダーに写る「靄」を頼りに写したら、ぎりぎり写っていた。近くにあるオレンジの星は双子座μ星。

M35とふたご座μ星
ちょっと流れてしまった。

[天体データメモ]

M35散開星団:2600光年

馬頭星雲(IC434)と八裂き星雲(NGC2024)

馬頭星雲(IC434)、八裂き星雲(NGC2024)、オリオン座ζ星
日没後、金星の観測をした。望遠鏡で観測する余裕がなかったので、惑星の形状観測までは手が回せなかったが、スペクトル観測をすることができた。ただ、夕日の残光に混ざってしまって、なかなかうまく撮れなかった。水星が確認できなかったのは残念。

その後、素晴らしい秋の星座と木星が夜空を埋め尽くした。木星のスペトル観察と、北アメリカ星雲の観測をしている内に、雲が出て来てしまった。

真夜中、もう一度外に出ると、今度は冬の星座で、満天の星空となっていた。冬の星空はかくも派手なのかと改めて思った。蟹星雲、昴、などを撮影した後、馬頭星雲の撮影に挑む。前回はNGC2024を撮ることはできたのだが、その下に馬頭星雲があることをすっかり忘れてしまい、まずい構図にしてしまった。また、そのとき写った馬頭星雲の淡い水素原子雲が写真に写りにくいことがわかったので、すこし長めに露出することにした。

iso12800で40秒と60秒で試したが、やはり60秒でやっとこ馬頭星雲の概形が写る程度。本当は厳しい極軸合わせをして2分くらいは露出したいところだろう。しかし、CD-1の極軸設定をいい加減にしたままだったので、60秒がギリギリだった。

40秒3枚、60秒2枚の合計4分のデータをgimpでコンポジット処理したのが、上の写真。馬頭星雲の暗黒星雲がぎりぎりでわかる。一方、八裂き星雲(NGC2024)はかなりよく写っている。

[天体データメモ]

馬頭星雲(IC434):1300光年、背景は水素原子ガス、黒いのは濃密なダストからなる暗黒星雲(高性能望遠鏡で見るとガスがたなびく様子がわかる!)

八裂き星雲(NGC2024): 1300光年、水素原子ガス。

オリオンζ星(Alnitak,アルニタク):800光年、三重星、主星は青色巨星。



2011年11月15日火曜日

北海道、そして西日本のセシウム汚染の可能性:アメリカのシミュレーション結果

朝日新聞に驚愕する記事が出た。日米欧の共同研究チーム、といっても主体はアメリカのUSRA(宇宙関連の研究を行うアメリカの大学の連合会)、による計算シミュレーションによると(うーむ、またシミュレーションか...)、北海道、そして中国地方と四国の山間部にも微弱なセシウム汚染があるという。(京都や福井も!)

最初はショックを受けたが、よく見てよく考えるとちょっと違和感も出て来た。まず、汚染分布がかなり大雑把だという点。先日発表された文科省の汚染分布と、詳細で違うところがある。いわゆるホットスポットがほとんどなく、例えば、柏一帯、平泉一帯が全部駄目、という感じ。解像度が悪い感じがする。多分シミュレーションの計算点が粗いのだと思う。それから、西向きよりも北向きに汚染が広がっている傾向が見られるが、実際には逆じゃないだろうか?計算条件で、北向きの風を強めにしてあるような気がする。

シミュレーションというのは、いろんな結論が出るので鵜呑みにはできないが、経路積分風にいえば、在り得るパラレルワールドの一つであることは確か。無視せず、敬意を払って、しかし慎重に解釈すべき。とにかく、汚染の可能性を指摘された北海道や西日本の地域は、実測して状態を明らかにすべきだ。まずはガイガー部隊、出動すべし!

(追記:シミュレーション計算の論文が手に入った。今は一般公開しているので、誰でも無料でダウンロードできる。この計算は、主筆がアメリカの研究機関にいる日本人。東大の早野さんも共著者の一人だが、おそらく観測データの提供やアドバイスをしたのだろう。さらに、シミュレーションのコードはノルウェーの有名な研究所のものを利用したんだと思う。現在、論文を読んで分析中。)

2011年11月14日月曜日

報道関係者に公開された福島第一原発:3号機付近が最高値

公開された福島第一原発に、報道関係者が立ち入り、取材を行った。東京新聞の記事には、「3号機の前で線量計が最高値を示した。1mSv/hだった。」とあった。よく考えれば、3号機はMOX燃料を燃やしていたプルサーマルの原子炉。小出さんの本を読んで気がついた。つまり、プルトニウムを「無理矢理」燃やしていた原子炉だ。

もんじゅの大失敗で、崩壊した核燃料サイクル計画。普通は廃棄物扱いのプルトニウムを溜め込んで、それを燃料とする「夢の」原子力発電システムだが、高速増殖炉が一基もないんじゃ、大量に溜まるだけ。プルトニウム239は核兵器に転用可能(長崎の原爆がプルトニウム型)なので、目的なしの溜め込みは国際法で違反。しかたなく、「プルサーマル」という自転車操業を行うことにしたが、これをやると手に負えない量とレベルの核廃棄物が逆に出てしまう可能性が指摘されている。いづれにせよ、事故が起きたとき、プルトニウムが飛び散ることは明白なので、もうプルトニウムの溜め込みはやめた方がいいだろう。もうすでにある分だけでも、原爆100個以上作れるほど溜まっているそうで、気が遠くなりそうだから。

「原発のウソ」を読む

小出裕章著
「原発のウソ」
扶桑社新書(2011年6月)

京大原子炉の小出氏の講演やインタビューなどを再構成して本にまとめたもの。中央に無視され続けても、闘い続ける姿勢がネットで認知され、今ではもっとも信頼できる「科学者」の一人となった。私自身は、プルトニウムの同位体比率を調べていて、彼の存在を知った。メルトダウンの実情や再臨界の可能性など、東電が否定し政府がやっきになって打ち消した、様々な予言が的中していくことで、さらに有名になった。

この本にはそういう予言がいくつか含まれていて、そのほとんどが現実のものとなった。東電の発表した最初の収束工程表は実現不可能だろう、ということ。メルトダウンはメルトスルーになっているだろう、ということ。などなど。あまりにも周知のこととなってしまったので、前半に書かれているこういうことは、原発について考え始めた人じゃなければ、不要な内容だろう。

前半で役に立つのは、1999年に突然起きた東海村のJCO臨界事故の概説。あまり勉強していなかったので、興味深かった。死者は結局2人だったこと。そして、その死に方はすさまじかったこと。被曝当日は看護婦とお喋りして結構元気だった人間が3ヶ月ももたずに死んでしまったこと。そして、その死に方は、生体組織の再生不能からくる悲惨な状態であること。特に最後の部分は、外部被曝の急性症状の典型例として、よく理解しておく必要があるだろう。

この2人が浴びたのは、主に中性子線だと思う。臨界状態で発する青いチェレンコフ光を眼前で見たというのだから、間違いない。(この光は一種の衝撃波なのだが、目玉の中の水分中を駆け抜ける中性子線から発せられたはずだ、と聞いたことがある。恐ろしい!)中性子線は、いろいろある放射線の中でも最悪の放射線だ。事故に合った作業員の被曝量はだいたい10から20シーベルトで、瞬間的にこれだけ浴びたんだと思う。人間の致死量は8シーベルトと言われているので、それを証明する格好になってしまった。

エントロピーは常に増大する、というのが熱力学の第二法則。ということは、同じ部品を使い続けるシステムはいずれは壊れてしまう。だから、生体が長生きするために採用した方法が、使える部品でもどんどん取り替えて新品にしてしまうこと、つまり代謝だ。代謝が停まると老化が進む。代謝のスピードより、エントロピーの増加のスピードが上回ると、死へと突き進むことになる。

8シーベルトなどという高い線量の放射線を浴びると、DNAが破壊され、生体の再生が不可能になってしまう。しかし、この程度の線量では、生体そのものはまだ破壊されていない。心臓も動いているし、脳だって機能している。あくまで、再生のための機能、つまり遺伝情報が破壊されただけだ。だから、JCOの作業員は被曝直後も比較的元気だったのだ。

しかし、しばらくたって代謝が始まると、問題が生じる。代謝できないのだ。新しい細胞が作れないから、血液の交換、細胞膜の交換、粘膜の交換、ホルモンの交換、などなどいくら30代、40代のおじさんたちだって、必要な代謝というのは毎日たくさんある。その多くが不可能になってしまうと、エントロピーが上がり始める。例えば、太陽の紫外線で痛んだ皮膚を修復できない。たいしたこともないバクテリアに対して、免疫をつくることができない。活性酸素で痛んだ細胞の機関を修復できない。などなど、目に見えないレベルでの「補修」が停まってしまうのだ。皮膚だけでなく、内蔵、骨、血管、神経などが、壊れ始める。生体は壊れると細胞液が溶け出し、血液が漏れだす。いわゆる「腐った」状態だ。これが、生きながらにして発生するのだから、地獄の苦しみだろう。

本の後半でいよいよ主題が登場し、ここで様々な「ウソ」が暴露される。
(1)温暖化には原発か?答えはNoだという。というのは、ウラン鉱石から核燃料を精錬する際に大量の二酸化炭素を排出してしまうからだ。また、原発自体を構成するコンクリートや鋼鉄の製造過程でも二酸化炭素はたくさん出るし、核燃料の運搬には化石燃料を使った船、自動車、鉄道などが利用される。また、原発から排出される余熱は、原発周辺の海水を平均で7度も上昇させるという。そういえば、昔、東海村の原子力研究所では、原子炉からの温水を利用してウナギを養殖していた。浜岡原発でもクエを温水で育てているそうな。どちらも高級魚だが、温水で育てると生育がよく美味しくなるそうだ。「原子力ウナギ」や「原子力クエ」は美味だったに違いない。しかし大切なことを忘れちゃ行けない。海水が上がると、気候システムが撹乱されてしまう。エルニーニョやラニーニャがそれ。最近は、この現象のせいで天変地異が頻発し、たくさんの被害が出ているし、死者も出ている。

(2)揚水発電は効率よいのか?答えはNoだという。子供のころ、揚水発電のCMがあった。「夜間に余った電力によって水をくみ上げ、昼間に水力発電を行い、電気を無駄無く使っています」とアニメーションで説明していた。なるほど、と感心したものだ。ところが、これもウソだという。まず、夜間に余るというならば、発電を止めてしまえばいいだろう。水力も火力もそういう調整はできるらしい。しかし、原発は一度動かすと一年以上は動かし続けないと効率が悪いそうで、昼も夜も、電気があってもなくても、とにかく動かし続けるのだと言う。つまり、揚水発電というのは、原発のためだけに考えだされたシステムで、揚水発電をやっていること自体が「エネルギーの無駄」なんだそうだ。これが本当なら、ハッキリいって電力会社に騙された!

(3)石油の枯渇に備えるためには、原発が必要?これもウソだという。ウランの埋蔵量は意外に少なく、この調子で世界が原発で発電続けると、石油よりも早く枯渇してしまうんだそう。それじゃ、もともこもないぞ!

(4)一番のウソは、多分これだろう。「日本の原子力技術は世界一」。これは、高木先生の本にも書いてあった。高木先生は、若い頃原子力産業の一員だったというから、その技術力の程度を内部からよく知っている。その人が、「日本の原子力技術は劣っている」と書いているんだから、本当なんだろう。

要は、敗戦国として核の技術を根こそぎ壊されてしまった分だけ、日本の原子力工学は遅れているのだという。欧米は原爆を作って、「利用できる」だけの技術がある訳で、核物質の知識、その利用法/加工法/処理法など、教科書に無いような細かいノウハウをたくさんもっているだろう。日本は、教科書に書かれていることしか知らない。いわば、自動車学校を卒業したばかりの若葉マークだ。そんな運転手にF1は操縦できないだろう。アメリカのプレッシャーもあって、説明書を読みながらF1をぶっ飛ばしてみるものの、その度にコースアウトして大破、中破しているような状態。だから、故障ばかりでなかなか動かなかったようだ。それでも、アメリカやイギリスから丸ごとコピーしてきた原子炉はなんとか「ふらふら」コーナーを曲がれる程度までには上達したそうだ。(しかし、「想定外」のカーブにさしかかった所で、大きくコースアウトし、大事故を起こしてしまった....)

そんな国が、原子力先進国のアメリカ、フランスなどが相次いで諦めた「高速増殖炉」を作るなぞ、気違いの沙汰だと思う。若葉マークの運転手がスペースシャトルの運転を任されるようなものだ。うまく行く訳ない。実際、初歩的なレベルで既に大事故を起こし(ナトリウム漏れ)、2兆円もかけて作った「もんじゅ」は1kwの電気も発電できぬまま、開発中止目前。(だからといって、動かせということにはならないことは、小出さんの本に書いてある。ナトリウム冷却の原子炉は、水で冷やせない!つまり、福島のようにイザとなったら海水で冷却、ということができないのだ。水をかけた瞬間にナトリウムと反応して大爆発してしまう!知恵の神である文殊菩薩に申し訳ない。)六ヶ所村の再処理施設も故障が多く、放射能漏れの事故もあるらしいし、なにより処理しきれなくなった放射能物質を太平洋に意図的に捨てているそうだ!(薄めてはいるらしいが...)。これも、管理技術の稚拙さ、レベルの低さから来ているという。

(5)核燃料サイクルや、プルサーマルも、実は破滅への「カミカゼ」のような状態らしい。長くなったので、ここでは割愛する。別の機会にメモる予定。

"Low-level radiation" by E. Sternglass

「内部被曝の脅威」で紹介されていた。
ペトカワ効果にヒントを得て、その研究を発展させたものらしい。読んでみたい。

「内部被曝の脅威」を読む

肥田舜太郎/鎌仲ひとみ著
「内部被曝の脅威 ——原爆から劣化ウラン弾まで」
ちくま新書(2005年)

を読んだ。これも福島の原発事故よりずっと前に書かれた本だ。

肥田氏は医者で、広島で被曝しているし、原爆で苦しむ人たちを爆弾炸裂の直後から、今に至るまでずっと治療し続けて来ている素晴らしい人。鎌仲氏はジャーナリスト。

原爆投下の日、およびそれからの広島の地獄絵の描写などは、実際に体験した人にしか書けない臨場感があり、それだけでもショックを受ける。強い放射線を浴びて死ぬ、ということの意味を、広島の医者が教えてくれる貴重な本だと思う。

しかし、この本がもっと素晴らしいものになっているのは、外部被曝ばかりに焦点を当てているのではなく、内部被曝に最重要ポイントを置いている点だ。その恐ろしさを長年見て来た医者だからこそ、真実味をもって伝えてくれるありがたい本。

内部被曝に関するデータが少ないということ、臨床例が少なく学術的にも医学的にもその影響が決まっていないこと、などなど、報道や政府の発表ではクドいほど繰り返されて来た。「直ちに影響はない」という今では有名になった政府発表は、この事実を反映しているように見える。

しかし、この本によると、それは米軍や日本政府による「意図的な情報操作」だという。内部被曝が長い年月を経て健康を害するものであれば、直接の被爆者よりも多くの人命が影響を受ける。補償問題が絡むことを考えれば、当局としては「直爆の影響のみが放射線障害だ」と結論づけてしまえば、その障害を持ちながら20年後に生き続け、訴訟してくるものはほとんどゼロだ。というのは、そういう人たちは死んでしまうから。

一方、内部被曝に苦しむ人たちは生き地獄を味わうことになる。言い換えれば、50年経っても訴訟を起こして問題を追及してくる。しかも、直爆で死ぬ人たちより圧倒的に人数が多い。もし内部被曝を認めてしまうと、原爆被害者にせよ、原発事故の被害者にせよ、原爆実験の米兵犠牲者にせよ、劣化ウラン弾を使った軍人にせよ、打ち込まれたアラブの子供達にせよ、大金を支払って補償しなくてはならない。当局にしてみれば、「それはまずい」ということだろうか?

原爆からの放射能塵を吸い込んで、内部被曝に苦しむ広島、長崎の人々の症状とはどういうものか?それは血を吹いたり、毛が抜けたり、青黒い斑点が出たりといったものではない。皆勤賞をもらって健康だった子供たちが、脱力感を訴えて何も出来なくなったり、具合が悪くなって一日寝込むようになったり、やる気がわかず鬱病のようになったり、などそういう曖昧な症状だという。これを「ぶらぶら病」と地元の人たちは呼んでいたという。このような症状が何年も、何十年も続いて、最後は平均寿命よりもはるかに手前の年齢で癌や白血病を何度も発症して、最後は体力尽きて死んでいく、というのが原爆による内部被曝者の症状らしい。劣化ウラン弾の蒸気を吸い込んだ湾岸帰還兵も、ウラン弾を打ち込まれたイラクの子供達も、似たような症状を見せているという。

では科学的にはどうなのか?一番大切な広島/長崎での臨床資料は米軍が全て接収してしまい、機密扱いになっているため、見ることができない。チェルノブイリの事故で初めて判ったのは、ヨウ素131による牛乳、飲み水の汚染のよる若年性甲状腺癌の問題。事故から5から10年程度で問題となり始めた。セシウム137、134の影響についてはまだ研究が進んでいないのだろう。半減期が30年もあるから、その効果が見えてくるのは60年後、100年後なのかもしれない。

生体実験は出来ないが、いろいろな研究は少しずつだが進んでいるようで、なかでもペトカワ効果というのが紹介されていた。1972年のカナダの学者により発見された、低線量被曝の影響を最初に指摘した現象だ。この実験では、細胞膜に構造がよく似た燐脂質の膜を牛の脳みその細胞を原料に作り出す。そして、この細胞膜に似た構造が放射線によって破壊される様子を調べる。

まずは、X線を強いレベルにして照射する。ただし、一回の照射は短時間に抑える。詳しいことが書いてなかったので想像になるが、だいたい一回の照射が2秒程度で、それを一時間おきに58回照射して、全部で35Svを浴びせた。これで膜は壊れたそうだが、逆に言うとこれほど強くやらなないと膜は壊れないということだ。

次は、偶然だったそうだが、ナトリウム22の弱い線源(半減期14時間で、陽電子を出す、つまりベータ線を放出する)を使った実験。10μSv/分の放射線を12分間あて続けたら(合計の線量が書いてあったが、計算があわない....ミス?)、あっけなく膜は壊れたという。

低線量に曝され続けた方が、高線量を散発的に浴びるよりも危険だろう、という結論だ。内部被曝が外部被曝より怖い事例は存在するということだ。

低線量被曝の恐ろしさの原因についての説明は次の通り。原因の一つは、フリーラジカル(活性酸素)だ。老化や生物に寿命があることの原因だとされている。散発的な外部被曝の場合、一度細胞やDNAが破壊されても、次の照射までに修復できれば問題は生じない。一方、内部被曝というのは、体内で常に放射線に曝されているので、修復する時間がないのだという。さらに、細胞に対する攻撃に、放射線によって生成された活性酸素も加わり、損害が倍増する。また、低レベルの放射線によるDNA損傷は「破壊的」ではないため、損傷を受けたまま複製のプロセスまで進んでしまうという。このようなことが重なって、内部被曝が生体に与える影響が無視できなくなるらしい。そして、その影響はじわじわと広がって、病気になったり、体の異変が生じるまで何十年、あるいは数世代かかることもあり得る、というから恐ろしい。あなたの病気が200年前の江戸幕府の御用学者によるある実験のせいだ、といわれてもピンとこない!核兵器を使った者、原発事故を起こした者、みんな「死に逃げ」してしまう。「ひき逃げ」は許されないのに。

ちなみにこの本、いろいろ間違いがある。一つは上でも書いたが、計算が合わなかったり、実験の詳細がよくわからないケース。こういうところは、キチンと書いておかないと、科学的には突っ込まれる。日頃接していて、医者というのは現象(病状)を回避(軽減)しようとするけれど、原因を突き止める態度が弱い時がある。そういう意味では、医者は科学者ではないと思ってしまう。この本を書いた医師も、ところどころに論理の矛盾点や計算につじつまが合わない所があり、現象から入る癖が見え隠れする欠点がある。

もうひとつ。放射線を「分子」だと思っているようで、そのような表現があちこちに見られる。放射線は原子核(α)あるいは素粒子(β、γ、あるいは中性子)であり、分子なんかよりずっと小さい!原子や分子なら、うまくすれば電子顕微鏡で「見る」ことは可能だが、放射線を見ることは電子顕微鏡でも不可能。この誤認は大きな問題なので、一般の人が誤解しないよう、早く書き直した方がよいと思う。

2011年11月12日土曜日

「原発事故はなぜくりかえすのか」を読む

高木仁三郎著、「原発事故はなぜくりかえすのか」を読んだ。岩波新書2000年。

高木さんは、高木学校の創立者であり、原子力資料情報室の元代表で、2000年に大腸癌で亡くなられた。この本が最後の執筆。東海村のJCO臨界事故や、福井にある高速増殖炉「もんじゅ」のナトリウム漏れの事故などを分析している。彼の警告は、福島のような大事故がかならずいつかは起きる、という「正しい』予言になってしまった。死の直前に口述筆記して作った本だというので構成が粗く思えるところもあるが、よい本だと思う。いろいろ勉強になる。

この本を読んで初めて気がついた点がいくつかある。

(1)原子力政策を導入したのは、中曽根康弘氏(元総理大臣)だったということ。戦後直後の1954年に、最初の予算がついたという。財界では正力松太郎氏(元読売新聞社長、元日本テレビ社長、プロ野球巨人軍創立者、など)が、この予算の成立に協力したという。1954年と言えば、敗戦から10年も経っていない。どうしてこの時期に?不思議に思って、Wikipediaを見てみると驚きの記述があった。

まず、正力氏は、戦前の警察官僚としてそのキャリアを始めている。関東大震災の朝鮮人虐殺のきっかけとなった噂を流した張本人だったというし、敗戦時はA級戦犯と認定され投獄されている。つまり、彼は先の大戦の戦争犯罪者だ。

ところが、投獄されてわずか二年で不起訴処分となり、釈放される。なにかおかしい、と思ったら、どうもCIAのスパイになるというアメリカとの取引に応じたらしい。もしそれが本当なら、「アメリカの犬」になって、私利私欲のために日本を売ったことになる。日本テレビの社長になれたのは、CIAへの情報の見返りなのかもしれないし、アメリカの日本における情報統制の目的があったのかもしれないし、詳しいことはわからない。そして、この直後に中曽根氏をサポートして、日本に原子力を持ち込んだ。マンハッタン計画で消えた大量の資金を回収するため、アメリカ政府は原子力発電で金儲けしようと考えていたはず。その植民地として日本を選んだのではないか?どう考えても大学で法学を専攻し、警察官僚やマスメディアの社長を経歴として持つ人間が思いつくような内容じゃない。CIAの手引きで中曽根氏と引き合わされたんだろうか?

一方の中曽根氏も軍人あがりであり、かつ高崎の豪商の出身だったから、警察上がりの財界人と話が合ったんではないだろうか?この辺りから、中曽根氏はアメリカと裏取引できるようになっていたんだと思う。(彼の「不沈空母」発言はこういう文脈から発生したのかもしれない。)

(2)高木氏は化学者だった。この本で、物理学者の問題は物質一つ一つに対する「人間レベルの感覚」が希薄なことだ、と指摘されていたが、結構正しいかもしれない。物理実験家が果たしてそうかどうかはともかく、物理の理論家としてはおおいに反省す。例えば、セシウムの化学形態については最近までよく知らなかったし、今でも実際に見たことがないので「感覚」としての存在が希薄だ。まず、常温(常温付近も含む)で液体の金属はこの世に3種類しかないことや、セシウムは揮発性が高いことなど、人間の感覚でわかる化学的な性質について、ほとんど知識や経験がない。

高木さんは実験室でセシウム137を直接扱っているので、現実に存在する物質としての認識が強い。あれが汚染物質だ、と目で見て知っている。こういう、五感で知っている知識/認識は本物だ。もしかすると、原発で働く技術者の中には、私と同じレベルの感覚/経験しか持たない人が結構多いのではないか?大学の物理実験ではセシウム137はプラスチックのケースに入っているので、それをビーカーに移し替えたり、熱してみたり、水に溶かしてみたり、などといった実験はやらない。物理の学生も、化学の実験をやった方がいいのではないか?定量分析などではとにかくコンタミ(汚染)に対してすごく慎重に考えるので、大雑把な近似ばかりを用いて「本質」を狙う物理とはちょっとアプローチが違うのかもしれない。(ちなみに、化学性質は放射性/非放射性に関わらず同じなので、セシウム137の化学特性を見たければ、その安定元素のセシウム133で練習しておけばよい。)

柏のセシウム汚染

千葉に住む学生の一人が、柏で測定してみたいというので、RD1503とベータ線遮蔽キットを貸してやった。RAMIでデータをまとめるんだよ、と教えてあげたら、即日エクセルでまとめたデータを送って来てくれた。実に優秀!

どのデータも20回分測定してあり、RAMIの収束もよい。その結果は次の通り。

JR柏駅駅前 :0.33μSv/h (以下、単位は省略)
西口第一公園:0.32

参考:柏市内の歩行測定:0.20

最後の「歩行測定」というのは、移動しながら測定したんだと思う。つまり、柏の人々は駅前付近に来ると、常に0.2μSv/h程度の放射線(β線を入れるともっと)を被曝していることになる。

柏のセシウム汚染がひどいことは、既に周知の事実だが、こうして実際に測ってみて、それが0.3を越えてくることを知ると、驚きを新たにする。今までの測定の中で、柏の0.3μSv/hより高かった地点は、軽井沢の離山と、平泉近くの前沢SAだけだ。(もちろん、碓氷峠や追分など、四捨五入すれば0.3という所は結構あったが。)

平泉のセシウム汚染

平泉やその周辺の汚染も明らかとなった。JB4020を使って自分で測定した、奥州市前沢の汚染も確認されたことになる。

2011年11月11日金曜日

長野県の汚染地図:甲信越、北陸や中部地方(静岡、岐阜)も。

ついに出た。長野県の汚染地図予想通りだったのは、実測していた軽井沢佐久山地野辺山佐久平蓼科、そして小諸、高峰高原。つまり、JB4020の測定は結構信頼できるということだ。JB4020やRD1503を持っている人たちは、どんどんRAMIを使って身の回りを測定すべき。自分の身の回りの、より詳細な汚染地図を作ることは可能だろう。
文部省発表の、空間線量の測定結果。
自然放射線量の影響は考慮していないと思われるので、
西の地域の値を読み取る時は注意が必要。
それにしても、関東では群馬と茨城の汚染がひどい。
また栃木と千葉の北半分や埼玉の西半分にも汚染があるのがわかる。

驚いたのは、長野や上田など千曲川に沿っての汚染があまりなかったこと。NHKで放送された国立環境研究所のシミュレーションは完璧ではなかったということだろう。逆に、南信州や松本、特に安曇野の空間線量が高くて驚いたが、実はこの辺りは自然放射線量も高い場所なので、福島から飛散したセシウム137等の影響とは言い切れない。同じように、静岡や岐阜、さらには石川や富山にも、空間線量だけみるとホットスポットのような場所があるが、放射性セシウムが起源かどうか確認してからじゃないと、結論は出せないだろう。

明らかなのは、軽井沢の汚染。ここはもともと日本で最低レベルの自然放射線量だから、ここの空間線量が高いのはすべて福島の事故が原因。(佐久山地の場合は、古い地層もあるので、慎重に考えるべきかもしれないが、内山峠の近辺は自然放射線量はもともと低いので、福島原発の事故が原因で線量が上がっている可能性が高いと思う。)なにより、セシウム134、137の地表面への沈着データを見ると、軽井沢や佐久山地のところまで汚染が広がっている。逆に松本や南信州、さらにもっと西の地域を見ると、空間線量は高いところがあっても、その地域の放射性セシウム沈着量はほぼ無しとなっている。セシウムの雨がひどく降ったのはやはり長野と群馬の県境、特に碓氷峠から南に伸びるラインだったのだろう。

一つ気になるのが、佐久穂町の群馬県境(たぶんここは十国峠だと思う)セシウム137沈着量が軽井沢よりずっと高いことだ。ここは石堂がある場所....やはりだめだったか、とショックを受けた。東電、政府(自民も含む)は許せない!

(追記:文科省の報告書の後ろのページに、測定法についての詳しい説明が今回はついていた。どうも、航空機による測定は測定時間が短いために困難がつきまとうようで、いろいろ計測値に手を入れて、処理し直しているようだ。したがって、今回汚染がないと判別された地域でも、それが真実かどうかは100%の確証はない、と思った方がいいだろう。やっぱり、測定は現地に出向いて、時間をかけて測定しないといけないんだろう。そういう意味でも、JB4020の活躍場所はまだまだ広がっていると思われる。)

追記:次の場所で、土壌のセシウム汚染レベルを、ガンマ線スペクトロメータ(LB2045)で測定した:長野市城山公園小諸市高峰高原東御市金原ダム手前上田市国道18号バイパス下などなど。

2011年11月9日水曜日

太陽のスペクトル

太陽のスペクトルを昨日のやり方で撮影してみた。本当はCCD素子は直射日光に弱いのであまりやってはいけないのだが、結構回折するので直射日光は写してない(はず)。若干曇りがちだったのも味方してくれたのかもしれないが、それでも「眩しい」。iso100, 1/100秒の撮影。スリットなしなので、スペクトルが広がってしまい重なり合ってしまった。暗線が見えないのはそのせいだと思う。失敗。

太陽のスペクトル
確かに7色あるような気がする。(左から、赤、橙、黄、緑、水色、青、紫?)

夜、都心では月が見えていたので月のスペクトルが撮れると思ったのに、帰宅すると雲の中。仕方ないので、別の街灯を撮影してみた。この街灯は「蛍光灯」だということが明らかにわかる!
街灯の1次の回折スペクトル


2011年11月8日火曜日

スペクトル分解による観察の仕方

天体の研究をやるならスペクトル分解は欠かせない。以前いろいろ試してみたが、やり方が今ひとつわからず、カメラで回折格子の箱を覗き込むのは肉体的に非常に苦しかった。(手は二本しかないのに、回折格子の箱とカメラを持った上に、ピント合わせと3つの仕事を同時にやらなければいけない!)

あれから色々模索してみたが、結局は専用のシステムを作る(買う)必要があるのかな、とあきらめていた。ところが、昨日偶然見つけたこのサイトに素晴らしい方法が紹介されていた!

回折格子のシートを、レンズに直接貼るのはためらわれるので、レンズカバーに貼付けてみた。静電気のせいか、非常によく密着する。これで、いろんな光源を覗いてみると、見える見える!ただ、電球の形のまま光が分解するので、いわゆるスペクトルの形状にならない。なるほど、だからスリットを通して光源の形を細長くした上で分解していたんだ!とようやく当たり前のことに気付く。(自分ではそれなりに大きな発見だった...)

最初は切りやすいからという理由だけで、小さな紙に切れ込みを入れて観測してみたが、紙の外から漏れてくる光と干渉して像がごちゃごちゃになる。なるほど、だからニュートンは部屋を閉め切ったんだ!と、新たな発見。今回は、光源が太陽ではないので、電球を覆い隠す程度の大きな、でも薄めの雑誌(市町村の情報紙がちょうどよい)に薄く切れ込みを入れて覗いてみると....おーっ、となる。
雑誌の切り込みで作った、暖色蛍光灯のスペクトル。
0次(左の原色)と1次(右のスペクトル)の
干渉縞を同時に測定。
切れ込みの形が嫌な場合は、画像処理ソフト(iPhotoなど)で、中央部を細く切り出してしまえばよい。

回折格子は、複数の干渉模様を生じる。中央の原色(スペクトル分解してないもの)が0次、その次が1次、その向こうが2次,...となっていくが、高次のパターンの明度は小さくなっていくので、撮影が難しくなる。むろん露出時間を長くすれば写ると思う。高次のスペクトルは屈折角度が大きいので、スペクトルが広がる。したがって、スペクトルの詳細な構造が研究できる。太陽の吸収線(フラウンホーファー線)などはこうやって、高次のスペクトルを長時間露光して記録したものだったのだ!!!

上の蛍光灯の2次のスペクトルを撮ってみた。ここまでなら肉眼でまだ見えるが、随分暗くなっているのがわかる。
左の明るいスペクトルは1次。右の散らばったスペクトルが2次。
面白いことに、2次のスペクトルで消えてしまった成分がある。これは、1次のスペクトルでみた時ぼやけているように見える成分だが、おそらく蛍光物質からの放出された成分。蛍光は散乱光だから強度が落ちるはずで、2次のスペクトルでは暗くなったものと思われる。長時間露光したら、浮かび上がるんだろう。とはいえ、2次のスペクトルを観察すれば、水銀自体の輝線スペクトルのみが観測できる訳で、これはこれで面白い。

次は、前回も撮影したLED電球のスペクトル。これも今回のやり方でやると、随分綺麗に、そして何よりも「楽に」とれる。
LED電球のスペクトル
青とそれ以外のところに、暗い断裂帯があるのがわかる。(強度スペクトルを描くのはどうやればよいのだろう?やっぱり、写真データの分析だろうか?)

星のスペクトル分解を撮影してみたかったのだが、あいにく今夜は曇り空。そこで、街灯を撮影してみた。
街灯のスペクトル。真ん中の点状の街灯のスペクトルは
写真の欄外。右の細長い蛍光灯のスペクトルのみが写っている。
半年程前に突如登場した眩しい街灯。政府の省エネ対策とやらで取り付けられたLED街灯であることがよくわかる。(青とそれ以外のところに、暗帯がある。)光源が遠くなると、一次のスペクトルの回折角度は結構大きくなるようだ。ちなみに2次のスペクトルは肉眼には見えなかった。

さて、次は天体のスペクトル分解にチャレンジしてみよう。


2011年11月7日月曜日

OS Xのapache2の設定:FollowSymLinks

研究が進むと、何故かいつもWebSiteの更新がやりたくなる。研究の紹介のようなものを書いてみたくなる。実は、秋の学会の直後に、アメリカとヨーロッパのライバル達の動向が判明し、それから2週間で慌ててまとめた論文が、どうやらacceptの見込みとなった。そういうこともあって、突然WebSite更新を思いついたのだと思う。

大学のサーバーで公開するのだが、その編集が意外に面倒で、ネット超しに直接編集するのは結構大変だ。そこで、ローカル環境に同じファイルを用意し、WebSiteをシミュレーションしてから一括転送することにした。

とはいえ、MacBook AirのSSDの容量は雀の涙しかないので、外付けのG-DRIVEにシミュレーション用のファイルを置きたい。しかし、localのapache2のpathは$HOME/Siteにあるので、シンボリックリンクを許す必要がある。このサイトを参考に、久しぶりにapache2のconfigファイルをいじってみることにした。

まず、設定ファイルがあるのはOS X (SnowLeopard)の場合、/etc/apache2/users/だ。このディレクトリにあるアカウント名の付いた.confファイルに必要なdirectiveを書き込んでいく。今回はOption FollowSymLinks

文法が正しいかどうか確認するには、httpd -t。また、修正後のapache2の再起動をする時は、apachectl restartを行う。

これで、シンボリックリンクが使用可能となった。



2011年11月5日土曜日

高木学校

志の高い科学者がいたことを知った。高木仁三郎氏のことだ。NHKの首都圏版のスペシャル番組で紹介されていたのを、偶然見た。2000年にこの世を去った高木氏の、正確で的確な予言に驚いたし、その志の高さに感動した。素晴らしい人がいたと思った。彼の遺志を継いで活動している高木学校の人々を応援したいと思う。

番組で紹介していたのは、日本の活動ばかりではなく、フランスの市民活動も紹介されていた。結局、フランス政府もチェルノブイリ事故の時、原発事故を矮小化しようとして、国民の信用を失ったのだという。「大丈夫、安心、ただちに健康には問題無し」といったフレーズを繰り返した挙げ句が、政府の御用学者への信頼失墜だったというから、どこかの国とまったく同じだ。そこで、政府の研究費に頼らずに研究活動できる学者を、市民たちが資金的にサポートする動きが始まったのだと言う。

解説には内橋克人氏。日本の社会は、原発事故と政府役人そして御用学者の嘘によって、今次のレベルへと生まれかわろうとしていると結論していた。彼の予言は当たるのはよく知っている。(小泉政権下で、竹中平蔵が旧式の自由競争を導入したとき、町の商店街が破壊され、人々の心や文化は荒廃し、格差が広がって生活弱者の生活は劣化する、と予言したのは彼だった。)

信州のセシウム汚染の度合い:秋の立科

立科での測定は、まずは長門牧場まで登って行うことにした。秋の気配が深まりつつあった。測定の結果はすでに書いてあるので、ここでは牧場の様子を紹介するだけにしておこう。
長門牧場にて、北アルプスをのぞむ。
北アルプスまでよく見える快晴の一日。観光客もほどほどで、快適な散歩/測定を行うことができた。いい結果となったので、おいしくピザを食べることもできた(今日はマルゲリータを)。乗馬を楽しむ人、景色を楽しむ人、羊と戯れる人たち。様々な楽しみ方で、人々は憩っていた。
美ヶ原
蓼科山。
浅間山が見える木の下(測定ポイント)
測定の様子

オリオン大星雲の観測:M42,M43とNGC1978

CD-1を買った最大の理由である、オリオン大星雲の観測がついにできた。以前の観測とは雲泥の差!
M42,M43そしてNGC1978
M43が「鳥の頭」、M42が「羽」にあたり、NGC1978は左上の青白い星雲。どれも、主成分は水素原子ガスで、星の「原料」となる。現に、オリオンの星雲は「星のゆりかご」と呼ばれる星生成領域で、若い星が多いという。赤い色は水素の輝線スペクトル発光、青い色は高温の若い星の光が原子ガスで反射した色だという。どの星雲も地球から約1500光年の距離にある。

気温は15度程度だったが、iso12800で撮ると、CCDの熱電流のノイズがさすがによく目立った。20秒で6枚、30秒で1枚撮ったものをgimpでコンポジット処理した。今度は30秒で撮り貯めて処理してみたい。ガスの感じをもう少しハッキリだせるといいのだが。

2011年11月2日水曜日

2号基はゾンビか?

先日初めてバイオハザードを見た。Doom系のゲームだったはずだが、映画でみても結構怖い。この映画の要は、銃で撃っても撃ってもなかなかくたばらないゾンビの怖さに尽きる。

2号基のウラン235が息を吹き返したかも、という驚くべきニュースが飛び込んで来た。(2号基はサプレッションチェンバーが破損していると言われている。)東電は慌てて中性子の吸収剤であるホウ素(ボロン)を原子炉に注入し始めたらしいが、彼らにしてみれば、原子炉の温度が100度を切っているのに、どうしてまたウラン235が分裂し始めたのか不思議でしかたないだろう。殺しても殺しても息を吹き返す、まさにゾンビに見えることだろう。今回も検出器の不具合をチェックしているそうだ。(まあ、これは工学者/科学者としては大事なことだが、報道でいちいち報告するようなことではない。チェックするのは当たり前で、むしろ確認してから発表するかどうかを決めるべき。)
しかし、東電が考えているような小規模のメルトダウンではなく、メルトスルーして地下に燃料が落ちてしまっているなら、原子炉の中には燃料はないので「冷温」になっているのは当然だろう。一方、地下深くに落ちた燃料が熱く溶けていれば、そこで核反応が起きても不思議ではない。

今回の核分裂というのは、自発核分裂ではなく、おそらく中性子捕獲による(誘導型の)核分裂で、連鎖反応のはじめの一歩に相当する核分裂だろう。キセノン(ゼノン)が検出された、と報道にあったが、たぶん中性子捕獲後の核分裂生成物ゼノン140(Xe-140)のことだと思う。このとき、ペアで作られるのがストロンチウム94。(こっちも検出するよう努力すべき。そしてまたもや、中性子線検出器を利用している気配がない...どうしてだろう?取り付け不能なのか、それとも放射線量が高すぎて機械が壊れてしまうのか?)そして、連鎖反応の要である2つの高速中性子も発生する。1つの中性子から2つの中性子が発生するので、ねずみ算式に中性子が増加し臨界状態へといたる。制御の効かない、壊れた原子炉の中で臨界(再臨界、それとも再再臨界?)に陥れば、また新鮮なヨウ素131やセシウム137、ストロンチウム90、さらにはプルトニウム239といった恐ろしい放射能物質が飛び出してくる。なにより、暴走が始まれば、メルトダウンが進行したり、ブスブスと燻りながら延々と放射能物質をまき散らす可能性がある。

2011年11月1日火曜日

関東の高放射線量地域

最近の報道をまとめてみたい。

まずは、柏、松戸地域の高放射線量地点が見つかったことについて。
(1)柏の市有地(市営住宅の跡地を広場として使用):(おそらく簡易測定によって)約60μSv/hの線量が記録され、その後の精密測定により、28万ベクレル/キロの汚染土壌が広場にあることが判明。核種同定ではセシウム134と137が確認され、その量もほぼ同数であることから、福島原発由来の放射能物質と結論された。雨水が流れ込んで、汚染物質が蓄積した結果と分析されている。(だとすると、これが関東地区の汚染のメインパターンとなるだろう。)付近の様子を写した写真を含む記事はここ。(10/22).

(2)松戸の農地(共産党による測定):約7μSv/hが共産党の簡易測定によって記録されたという。以前東京都の線量を測った共産党だが、その測定は粗い感じがした。値自体は誤差が大きいだろうが、放射能汚染の有無程度なら判別できる精度はあるだろう。よって、より精密に松戸周辺を測定するべきだと思う。(10/20).

次に、世田谷の高線量地点など東京の話題について。
(1)八幡山:今度は八幡山のスーパー敷地内外で、最高170μSv/hの線量が測定された。これは0.17mSv/hということだから、ここに10時間立っていれば、1.7mSvの被曝をすることになる。ただし、この場所は原発事故によるセシウム134,137の蓄積とは考えにくいと言われている。前回の弦巻のように、ラジウム226などの他の放射能物質の不法投棄/あるいは不法管理が原因か?どうも世田谷周辺には、そういう場所がそもそも結構あるのではないか?原発事故をけっかけに市民が測定し始めたため、「ばれだした」という可能性もある。そういう意味では、東京は昔から汚染されてしまっていたのかもしれない。
(2)東工大の「福島農産物フェア」と食品の新規制値づくり:
前にも議論したが、現在の暫定基準値目一杯に汚染された食品を食べ続けると、健康被害の危険性は高まる。一年以内(あるいはギリギリで二年以内)には暫定基準値をWHOの水準まで下げるべきだ、というのが私の考えだが、日本政府は半年以上たってようやく暫定基準値を見直す動きを始めた。(注意:動き始めただけで、まだ改訂してない!)改訂して年間内部被曝量を1ミリシーベルトにする、つまり暫定基準値を現在の1/5に減らすらしいが、1/10にする思案もあるそうだ。仮に後者だとしても、まだ高い基準値だと思う。

現在の暫定基準値が高いという認識は周知の事実かと思ったら、そうでもないようで驚いた。東工大の若者たちが福島の野菜ばかりを選んで学園祭の料理をつくろうといっているらしい。福島の野菜は測定限界以下(多くの場合20Bq/kg)の放射能物質を含んでいる可能性は否定できない。NDの食物は新陳代謝の遅くなったウン十歳以上の人たち(小出先生によれば50歳が目安だとか)や東電の人たちやその家族に食べてもらえばよく、若者たちがその責任を負う必要はまったくない。彼らは内部被曝を出来る限り避けるべきだ。

現在の高い暫定値の意味は、「国民よ、東電/政府の犠牲となって生きよ」という政府のメッセージであり、国民の命を東電関係者に献上することを要求していることに他ならない。つまり、暫定基準値というのは国民の健康を保証するものではなく、この程度だったらあなたの命頂いてもいいよね、と政府が決めた「命献上の許容範囲」と考えるべき。(献血の暫定基準値を1リットルにしたようなものだろう。死にはしないけど、健康にはかなり悪い。)大学では、学生たちにこういう風に教えるべきだと思う。ちなみに、この学生らに教えている東工大の先生はというと、柏の27万ベクレル/キロの放射能汚染が起きている場所について、「健康に害はない」とコメントしている。(京大原子炉で学園祭をやるとしたら、こういうフェアはまず開催できないだろう。)うーむ、こういう大学では、こういう催しはむしろ褒められるのかも。(卒業したら東電や原子炉関係の職場に行くのかな?彼らは工学系の学生だし。だとしたら残念。)